【完】こちら王宮学園生徒会執行部
◆
朝7時。ピンポーンと鳴らされたチャイムの音。
くるっと振り返れば、いつみがわたしの頭を優しく撫でてくれた。
「気をつけてな。何かあったら連絡しろよ」
「ふふ、うん。ありがとういつみ。
いつみこそ、何かあったらちゃんと連絡してよ?」
「大丈夫だよ。2個下には夕帆もいるしな」
いくみさんと買い物に行って色違いの水着をそろえたり、シミラールックになるように服をそろえたり。
お互い、いつみや夕帆さんに気づかれないよう、旅行準備を進めた。そして今日は、その旅行当日。
「なら平気ね。いってきます」
ただホテルで泊まるだけにしては、やけに家を出る時間が早くなってしまう。
ということで、すこし離れたカフェへ、人気のモーニングを食べに行くという嘘をついた上でのプラン。
そっとキスをくれる彼に、同じように返して。
玄関のドアを開くと、いくみさんがニコニコしながら「おはよう」を言ってくれた。
「おはようございますいくみさん」
「朝から元気だな」
「ふふっ、今日のモーニングを楽しみにしてたんだから。
ささ、南々瀬ちゃん。売り切れないように早く行きましょう」
彼女に急かされ、靴を履いて。
すこし大きめのバッグを肩にかけると、ふたりでいつみに「いってきます」を告げて家を出た。
そのまま無言で廊下を歩き、エレベーターに乗って顔を見合わせると、どちらともなく笑ってしまう。
別にやましいことはないんだけど、やっぱりいつみに嘘をつくのってなんとなく罪悪感があるし。
それでなくても鋭いんだから、なんだか緊張した。
いつも通り見送ってくれたことを考えると、別に疑ってはいないだろう。