【完】こちら王宮学園生徒会執行部
へえ、と頷いてる南々瀬ちゃん。
どうやら彼は八王子の名前を継いでいないものの関係者であり、このホテルの開業に合わせて仕事を手伝う立場らしい。
南々瀬ちゃんといくみの送迎を担当したのもこの男のようだ。
……まあ、問題は。
「いつみ。さっき御園くん、
南々瀬ちゃんを"かわいいお嫁さん"って口説いてたわよ?」
「ちょっ、いくみさん……!」
彼が何か言いたげな表情で、彼女を見てるってことなんだけど。
その発言にいつみが機嫌を悪くするのはもちろんのこと、何人かの心情がざわつくのは言うまでもない。
「へえ?」
彼女の立場がこれ以上危うくならないよう結婚を急いていたのとは別で、いつみはこれ以上南々瀬ちゃんに男が寄り付いてほしくないと思ってる。
だから言わないだけで仕事に関しても心配してて、仕事終わりの彼女をわざわざ迎えに行ったりするのもそのためで。
「聞き逃せない発言だな」
「冗談に決まってるじゃないですか。
わざわざウチのVIPのお客様、ましてや既婚者の方に手を出すほど飢えてませんよ」
っていうか。こういう時いつも食いついてくるはずの夕陽が静かだな、とそっちに視線を向ければ。
じーっと南々瀬ちゃんの一点を見つめてる。
「……もうちょっと目逸らすとかねえの?」
「は? なに? なんか言いたいの?」
「いや、さっきからずっと南々瀬ちゃんの胸見てるから」
「見てないんだけど!?」