【完】こちら王宮学園生徒会執行部
まあ、夕陽も年頃の男だし。
前ほど迫ったりすることはないし、結婚したふたりを純粋な気持ちで祝っていたのも知ってるけど、それでも気持ちが完全に消えたわけじゃない。
「夕陽」
「誤解だって。今さらナナに欲情すると思う?」
たしなめるようないつみの一言に言い返してる夕陽。
でもその瞬間、全員が「するだろ」と思ったし、南々瀬ちゃんでさえ困った顔をしていた。
「つーか、俺らも着替えね?
せっかくついてきたから、俺泳ぎてーんだけど」
「俺も今日は瑠璃と翡翠連れてきてねえし、泳ぎてえな~。
呉ちゃん。あとで家の分のお土産いっしょに選ぼうじゃねえの」
長々と立ち話をしていたら、傍観に徹していた莉央と椛から声が上がる。
確かにふたりを見つけてそのままここへ来たから、俺らは水着姿ですらない。
「……そうだな。着替えてくるか」
ふっと息を落としたいつみが、南々瀬ちゃんの頭を撫でる。
……高校に通ってた1年間も、一緒に住んでも、ずっと一緒なのに飽きることなく彼女にだけ向けられる優しい視線。
リナから、『いつみは本気であの子を15年も想ってたの?』と聞かれたけど。
『それを一貫してんのがいつみだろ』と返しておいた。
いつみのそれを、信じられないって感じだったけど。
コイツは南々瀬ちゃんのことをどうしようもなく好きなんだよ、本当に。
「一度着替えてから戻ってくる。大人しく待てるな?」
「わたしのこと子どもだと思ってる?」
「思ってねえから心配してんだよ」