【完】こちら王宮学園生徒会執行部



ちらっと見えた左手の薬指に嵌まった指輪。

俺らは大体大学でも一緒にいるし、たまにNANAの兄貴だからって声を掛けられることもあるけど。



どの女の子も、いつみ目当ての場合はその場所に輝きを見つけて残念そうな顔をする。

わざわざ結婚したなんて言いふらしたりはしないけど、これだけの色男がある日突然結婚指輪を嵌めていたら、女の子たちも思うところがあるんだろう。



……まあ、それ以前に声を掛けられたところでいつみは大して会話しないし。

興味ありませんって態度に出てるから、何も彼女が心配するようなことはないんだけど。



「どういうこと?」



「南々瀬ちゃんが可愛くて仕方ないってことよ。

ね? いつみ」



「……まあ似たようなもんだな」



「いつみが素直!」




いくみもいくみで、ふたりが結婚してからはいつみにべたべたすることが減った。

シスコンなりに南々瀬ちゃんに気を遣ってるのは、俺から見ても分かる。



相も変わらず何かあったら"いつみ"って言うけど。



……って、そうじゃねえや。着替えに行くんだっけ?



「いくみ。男が寄ってきても無視しろよ」



「言われなくても分かってるわよ」



「ん。じゃあ着替えに行ってくるわ」



今までこういう時、いくみは歳が離れているから一緒には過ごせなかった。

それを考えると、こうやって一緒の時間を過ごせるのは、結構なレアケースだ。



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