【完】こちら王宮学園生徒会執行部



ぞろぞろと着替えに戻るタイミングで、御園と呼ばれた彼は素直にその場を離れた。

先ほどの言葉はどうやら嘘ではないらしく、南々瀬ちゃんの旦那がこの男だと知った以上、余計な手出しをすることは避けたらしい。



まあ、賢明な判断だと思う。

そこで自分の感情を貫こうとする馬鹿だったら、遠慮なく俺らはそれなりの対処をするところだったけど。



「おかえりー。待ちくたびれて先に入っちゃった」



「子どもか」



手早く着替えを終えてもどったというのに、既に海の中にいるいくみ。

さっきまで着ていたパーカーを脱いで、惜しみなく肌を晒している姿にヤキモキしなくはない。



……これでコイツらの中の誰かがいくみを好きだったら、もやもやするんだろうな。

そう考えたら、それでも穏やかにしているいつみは結構我慢強いと思う。



まあ、あの感じから察するに今夜彼女は離してもらえないと思うけど。




「夕帆。ちょっとこっち」



「ん?」



俺の腕を、くっと引っ張るいくみ。

その手には濡れないようにしながら持っているスマホがあって、何をするのかと思えば。



「思い出作り」



ふわっと微笑んだいくみが、内カメラで動画の撮影を開始する。

……別に写真も動画も好きじゃねえけど、いくみに撮られて悪い気はしねえよな。



嬉しそうな姿を見たら、女ふたりで遠くに外泊しようとしたことも怒るに怒れない。

いくみ姉と呼び続けていたあの頃も、俺はずっと。



「っ、な」



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