【完】こちら王宮学園生徒会執行部



恋愛感情は抱かないけれど、それでも可愛い弟のように思ってしまう。

ついつい構ってあげたくなる気持ちもあって、余計に夕陽のことを惑わせてしまってるのかもしれない。



面倒そうな顔をしながらも、海で楽しんで遊んでた夕陽。

その横顔が出会った頃よりも幾分か大人っぽく見えて、すこしだけ寂しい気持ちになった。



「おかえりなさい。電話、大丈夫だった?」



「ん。大した話じゃなかった」



「ご飯取りに行こっか?

せっかくのバイキングだから好きなもの取りたいかなって思って取らなかったから、手伝うわよ」



「いや、取ってきたなら先食べてていいぞ」



電話を終えたいつみが、そう言ってバイキングコーナーへと歩いていく。

腰を上げかけたけれど、先に食事を始めていた隣のテーブルの椛が何か取りに行くために一緒に席を立ったのを見て、わたしも大人しく座り直した。




「南々ちゃん。

いっくんすぐ戻ってくるだろうし、食べよっか?」



ふわり。

笑ってそう言ってくれる呉羽に、そうねと返すけれど。なんとなくいつみを待たずに食べ始めるのが嫌で、ほかのみんなには先に食べ始めてもらった。



「なんだ、食べてなかったのか」



「一緒に食べたいなと思って」



「……ん。待たせて悪いな」



莉央とルアは何か話しているし、呉羽と夕陽も食べながらちょこちょこと話してる。

隣のテーブルでも楽しそうに会話しているのが聞こえるけど、何を言ってるのかまでは分からない。



ようやく席に着いたいつみと一緒に「いただきます」をしながら。

こうやってみんなで出掛けられる機会なんて今後ほとんどないんだろうなと思うと、すこしだけ心臓がキュッとなった。



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