【完】こちら王宮学園生徒会執行部







「南々ちゃん。ごめんね、忙しいのに」



「全然大丈夫よ。ちょうど今日は暇だったし」



高校生の間は安全面に適しているからとC棟の自室で過ごしていたけれど、新しい住まいは両親が契約してくれたひとり暮らしのマンション。

新年度に向けて支度するわたしの部屋にたずねて来たのは、呉羽だった。



彼から相談を受けたのは、昨夜のこと。

兄である椛に、高校卒業と大学入学を祝して、呉羽は何かプレゼントを贈りたいらしい。



可愛いお兄ちゃん愛に、わたしが「明日にでも買いに行こう」と言ったことで、すぐに予定が決まった。

時刻は昼過ぎ。机に広げていた仕事用の書類を片付け、用意してあったショルダーバッグを肩にかける。



「さて、行きましょうか」



ふたりでマンションを出て、何でも揃いそうな百貨店へ足を向ける。

不意にぶつかった手を大きな手に握られて、思わずどきりとしてしまった。




「呉羽、手……」



「だめだった?」



「……ううん、」



だめじゃないけど。

ふたつも歳の離れた呉羽にエスコートされるのがなんだか気恥ずかしいというか、落ち着かないというか。



言い表せなくて口ごもるわたしに、呉羽はくすっと笑う。

椛とはまた違う、優しくてあったかくて、でもなんだか無性にそわそわするその笑みは何なんだろう。



「デート、断られなくてよかった」



「え、」



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