【完】こちら王宮学園生徒会執行部
◆
「南々ちゃん。ごめんね、忙しいのに」
「全然大丈夫よ。ちょうど今日は暇だったし」
高校生の間は安全面に適しているからとC棟の自室で過ごしていたけれど、新しい住まいは両親が契約してくれたひとり暮らしのマンション。
新年度に向けて支度するわたしの部屋にたずねて来たのは、呉羽だった。
彼から相談を受けたのは、昨夜のこと。
兄である椛に、高校卒業と大学入学を祝して、呉羽は何かプレゼントを贈りたいらしい。
可愛いお兄ちゃん愛に、わたしが「明日にでも買いに行こう」と言ったことで、すぐに予定が決まった。
時刻は昼過ぎ。机に広げていた仕事用の書類を片付け、用意してあったショルダーバッグを肩にかける。
「さて、行きましょうか」
ふたりでマンションを出て、何でも揃いそうな百貨店へ足を向ける。
不意にぶつかった手を大きな手に握られて、思わずどきりとしてしまった。
「呉羽、手……」
「だめだった?」
「……ううん、」
だめじゃないけど。
ふたつも歳の離れた呉羽にエスコートされるのがなんだか気恥ずかしいというか、落ち着かないというか。
言い表せなくて口ごもるわたしに、呉羽はくすっと笑う。
椛とはまた違う、優しくてあったかくて、でもなんだか無性にそわそわするその笑みは何なんだろう。
「デート、断られなくてよかった」
「え、」