【完】こちら王宮学園生徒会執行部
……デート、って。
しれっと出てきた一言に動揺するわたし。けれど呉羽は何の気もないようで、いつも通り涼しい顔をしてる。
「デートだったの? これ」
「ふたりで出掛けるのにデートじゃないの?」
「いや、うん……」
付き合ってる男女が一緒に出掛けたら、そりゃもうデートだとはわたしも思うけど。
ついこの間まで生徒会役員として一緒に過ごしてきたせいで、"デート"なんて時間も、ロクに取れていなかった。
そもそも、まだ付き合ったばかりだし。
生徒会の仕事でふたりで作業したり理事長のところへ行ったり、学校内のどこかでふたりになるタイミングは、今までもあったけど。
それとは別で、ふたりで過ごすのって実ははじめてなんじゃ……?
「っ……」
そう思ったら、急に意識してしまう。
ふわりと笑うその表情でさえ、なんだか色っぽく見えてしまって、目を逸らした。
「俺はデートだと思ってたんだけど、良い?」
「い、"良い"ってなに……?」
「うん?
このままデートだと思ってて良い?ってこと」
年下ってズルい。
夕陽もそうだけれど、甘えるのがとても上手で。
なんだかんだ、本当に嫌がるようなことはしないところとか。
そういう駆け引きのような優しいそぶりに、わたしがどれだけ揺らされているのかも知らないで。