【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「だめ、って言ったら?」
「うーん、困るかなぁ」
……絶対困ってないでしょ、その顔。
困ってる人はそんなさわやかな笑みなんて見せたりしないのよ。
だから、困らせてみたくもなるわけで。
「デートでいいわよ、わたしもそう思ってるし。
その代わり、わたしのことエスコートしてくれる?」
ふたつも年下の子に対して、大人げないとは思うけれど。
年上の余裕も見せたいのよ、わたしは。
そんなわたしの返答が、意外だったのか。
呉羽はほんのすこし驚いたように瞬きして、それから、ふわりと笑う。
「わかった。任せといて」
「……え、いいの?」
「うん。彼女のかわいい頼みだもん」
頑張るよ、なんて言われてしまうと、なんだか意地を張ったわたしが馬鹿みたいだ。
つながれた手から伝わってくるぬくもりも、彼が見せてくれる笑顔だって、とってもあたたかいのに。
「ねえ、呉羽」
わたしは、何を焦ってるんだろう。
呼び止めれば聞き逃すことなく、わたしの言葉に耳を傾けてくれる。
それぞれ事情を抱えたほかの生徒会メンバーのことを受け止めて、受け入れて、大事だと言うのに何の覚悟もなかったなんて、そんなこと思わない。だから。