【完】こちら王宮学園生徒会執行部



だからそんなふうに、思わないで。

自信をもってわたしの隣にいてほしいのだと伝えれば、呉羽はわたしの好きな笑顔で優しく笑って、嬉しそうにうなずいてくれた。



呉羽と付き合うことを、決めたとき。

夕陽にももちろん伝えたのだけれど、彼は「ふぅん。まぁいいんじゃない」と言ってくれた。夕陽がそう言ってくれるのだから、彼もどれだけ呉羽の優しさに触れてきたのか容易に分かる。



「あ、コレとかどう?」



「シンプルでいいんじゃない?

筆記具なら、大学に入ってからも使えるだろうし……」



百貨店にたどり着いて、一通りフロアを見て回ってから。

ふたりで足を止めたのは、シックな大人向けの文房具コーナー。



「うーん……」



商品を真剣に見つめて悩む呉羽に気づかれないよう、小さく笑みを漏らす。

きっと椛は、呉羽からのプレゼントなら、なんでも喜んでくれると思うんだけど。




「決めた。これにする」



店員さんにもおすすめを聞いて、しばし悩んだ末にボールペンにすると決めたらしい。

艶のあるワインレッドのボディは、間違いなく椛に似合うはずだ。喜ぶ顔が想像できる。



「南々ちゃん。

付き合ってもらって申し訳ないけど、地下の食品コーナー見に行ってもいい?」



お会計を済ませ、綺麗にラッピングされたプレゼントを手に。

スマホで時刻を確認した呉羽が、ちらりとわたしを見る。



「いいわよ? 何か買いたいものあった?」



「兄ちゃんにだけ、プレゼントだから。

瑠璃と翡翠には、何かお菓子でも買って帰ろうかなって思って」



それを聞いて、くすりと笑みが漏れてしまった。

本当に、兄弟思いで優しい。人目がなかったら頭を撫で回したいくらいの愛おしさに襲われたけど、我慢して、「そうしましょう」と彼の手を握った。



< 270 / 276 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop