【完】こちら王宮学園生徒会執行部



そんな風に言われてしまうと、なんとなく、ひとりで帰りづらいわけで。

ふたつの表札が掛かる家から新居のマンションまでを歩くわたしの隣には、呉羽がいた。



「南々ちゃん、ほんとによかったの?

急に家に泊まりに来てもいいなんて……」



「うん、せっかく春休みだし」



「ありがとう。

俺でよければ荷解きとか手伝うよ?」



朝と同じように、繋がった手。

最初はあんなに緊張して繋いでたのに、今じゃそれがすごく自然に感じる。……こんな風に、呉羽と付き合っていくことにも、慣れていくんだろうか。



「ううん、そのために呼んだわけじゃないから。

一緒にいてくれたら、それで十分よ」



いつまでも、その優しさを隣で見ていたい。

それはきっと、とても贅沢なことで。




「……呉羽」



「うん? おかえり、南々ちゃん」



家に帰り、済ませたい仕事があるからと先にシャワーを浴びてもらって。

入れ替わりでシャワーを浴びてから、寝室に向かえば、ベッドの上でわたしを迎えてくれる呉羽。



すぐそばまで歩み寄って。

一瞬恥ずかしい気持ちになったけど、それを覆い隠すみたいに呉羽に抱きついた。



「わ、びっくりした。

急にどうしたの? なんかあった?」



「ううん……ちがうの」



いちばんに、何よりも心配してくれるところが呉羽らしい。

でも今はそうじゃなくて、と。顔を上げてそのくちびるにキスで触れれば、呉羽がわずかに目を見張る。



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