【完】こちら王宮学園生徒会執行部
・それではお家訪問です
◆
土曜日、午前10時。
ぴんぽーん、と、チャイムが来客を知らせる。
「はーい」
ぱたぱたと玄関まで駆けていき、扉を開ければ。
「おはよ〜」
揃っているのは生徒会のメンバーで、口々に「おはよう」を言ってくれる。
それに「おはよう」を返してぞろぞろと上がってもらう途中で、「ん」と夕陽が渡してくれたのは『Juliet』のロゴが入った白い紙箱。
今日は、例の"歓迎会"の日。
いつみ先輩からの提案を伝えれば彼らはすぐさま飛びついて、生徒会棟で行う予定だった歓迎会は、わたしたちの家で実行されることになった。
とはいえ、歓迎会というのは名前だけだけど。
「わざわざケーキ買ってきてくれたの?」
「……あいつら、俺に一番金稼いでるだろって集(たか)ってきたから。
まじで後輩をなんだと思ってんの」
「え、なんかごめんね。
ケーキ代ぐらいわたしが返すけど、」
「いいよ別に、間違ってはないんだし。
……ナナに払わせるくらいなら、絶対あいつら割り勘するだろうから」
さらりとわたしの髪を撫でて、そう言う夕陽。
なんだか大人になった気がする、なんて思いながらお礼を言えば、彼は嫌味のない表情で微笑んでくれた。──その、やわらかい微笑が。
「……なんで兄貴がいんの?」
リビングにいた先客によって、途端に歪んだ。