【完】こちら王宮学園生徒会執行部
安心したように眠る南々瀬の姿に、肩の力を抜く。
……結婚の話もふくめて、まだ南々瀬に話していないことは多い。
でも、"あの日"誓った約束を破るつもりはない。
無防備に投げ出された南々瀬の左手に触れる。
白いシーツの上で無限の煌めきを放つ指輪。
極彩色の輝きは、褪せることのない何気ない日常。
南々瀬の望んだ"普通"は、いつだって、綺麗な形を保ってはくれない。
「………」
だからこそ、途方もなく守ってやりたくなる。
皮肉なことに、あの計画がなければ俺は南々瀬とセレモニーで顔を合わせることなどなかった。
あの計画がなければ、南々瀬は幸せでいられたかもしれないのに。
それでも俺は、望んでしまうんだろう。
「『夢かなう』と、『不可能』……か」
何度も何度も。
南々瀬と出会うことを、望んでしまう。
好きな相手が幸せならそれでいいだなんてそんなの、所詮は綺麗事だ。
俺はもうこの手を二度と離してはやれない。
「、」
ネックレスのチェーンが肌を滑った感触で、無意識にトップへと触れる。
南々瀬から誕生日にもらったそれは、まるで雪の結晶のように繊細なデザインが施されていて。
シンプルで男がつけても違和感はないが、もともとはレディースものらしい。
『いつみ先輩の繊細さを考えると、メンズよりレディースの細身なデザインのほうが似合うと思って』と。
1ヶ月少し前の南々瀬の言葉が、頭を巡る。
その言動のすべてが、南々瀬の強さであること。……言われなくとも、もう、理解しているつもりだったけれど。