【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「あー……南々瀬?」
ふたたびスマホが、先ほどと同じ番号を受けて振動する。
伺うように顔を覗き込んできたいつみに、「ふふ。なんでもない」と言って着信拒否。電源を切れば、夕帆先輩が引きつった顔でわたしを見た。
「南々瀬ちゃんに出会って、
はじめてその笑顔に恐怖を感じたんだけど……」
「そうですか?
いつみも夕帆先輩も何も見てませんよ」
「清々しいくらいさらっと嘘つくんだけどこの子」
「……何かやましいことでもあるのか?」
わたしと夕帆先輩、どちらに向けたのかわからないため息を吐いたいつみが、わたしの頭を撫でながら聞いてくる。
やましいことは本当に一切ない関係のため、「ううん」と否定するけれど。
「……俺だってお前と同じように勘違いするぞ」
そう言われてしまえば、昨日の自分を否応なしに思い出すほかなくて。
どう紹介しようか、悩んだ末に。
「ちょっと変な男に好かれてて……
わたしがロスにいたとき、同じ学校にいた日本人の男の子なんですけど、」
そろりと口を開いて、ゆっくり言葉を紡ぐ。
その男の名前は、柴崎 茉文。
……そう。
"異国交流"のリストにあった名前だ。
「どこが"ちょっと変"?
俺から見れば初恋引きずりすぎないつみも、相当の変人に思えるけど」
いや、わたしから見れば夕帆先輩も相当変わってますけど。
……と、本人を目の前にして言う勇気はない。