【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「おはようございます」
夕帆先輩の奥に見えるリビングの扉が、かちゃりと開いて。
顔を覗かせたルノの言葉で、一度3人の視線がそちらに向く。おはようを返すと、ふたりの興味はすっかりわたしから逸れたらしかった。
それにほっとして時間を見ようとするけれど、スマホは真っ黒で無反応。
さっき電源切ったんだった……
「テキトーにシャワー浴びるなり何なりしてくれていいから。
テーブルの上にコンビニの袋あるだろ。それにいくつかパンとか飲み物とか入ってる。ほかの奴らは?」
「ありがとうございます。
椛先輩がいま起きましたよ。他はまだ」
「……朝5時まで騒いでたらそうもなるわな」
「えっ、5時……!?」
それはこの時間でも眠いワケだわ……!
出てきた時は眠そうだったのに、いまはもうけろっとしてる夕帆先輩が怖い。夕陽は仕事に差し支えたりしてないだろうか。
「ああ、そうだ。
これだけ立ち話しといてなんだけど、入る?」
「……いや。
俺らがいても邪魔なだけだしな」
思い出したように振り返った夕帆先輩にそう言って、いつみがわたしの手を引く。
夕帆先輩はそれに対して「そ」と短く口にしただけで、ひらひらと手を振って見送ってくれた。
「このあとどうするの?」
夕帆先輩の部屋はウチの2階下。
別に階段でも移動がつらい距離感ではないのだけれど、エレベーターに乗り込んで。
未だに手をつないでいる彼に問いかけてみれば、一瞬考えるようなそぶりを見せる。
それから声に出されたのは「仕事する」という想定内の答えだったため、特に何も考えることなく「そっか」と返事した。