【完】こちら王宮学園生徒会執行部



「じゃあわたしは、

スーパーまで買い出し行ってきても良い?」



「ああ。ほかに寄るところは?」



「んー、

銀行にお金引き出しに行ってこようかなぁって」



わたしがまだ人質だった頃、両親が毎月貯金をしておいてくれたおかげで、高校生とは思えない額の貯金がある。

とはいえどういう契約なのか、わたしは一緒に住んでいるのにマンションの家賃も払っていない。



買い出しやら公共料金なんかも、いつみに持たされているカードで払うように言われているし。

……まあ、いつみがわたしの両親と話をしてくれているから、そのあたりは両親といつみに任せてあるんだけど。



わたしが自分のお金を使うのは、自分の買い物をするときだけ。

それなのに一緒に出かければいつみが払ってくれるんだから、なんだか申し訳ない。



彼は、「籍入れたら同じだ」って言ってるけど。




「………」



結婚してからの予行演習をしているみたいだな、とときどき感じることがある。

……わたし、まだ高校生なのに。



到着したエレベーターをおりて部屋の鍵を開けると、いつみが扉を押さえて待ってくれる。

お礼を言って先に足を踏み入れ、靴を脱いで部屋に上がろうとしたら。



「わ、」



うしろから腕を引かれて、バランスを崩しそうになる。

けれどしっかり抱きとめられて、どういうわけか、彼の胸におさまった。



「いつみ……?」



唐突な彼の行動におどろいて、おそるおそる声をかける。

返事はなくて、ただ腕の力が強まっただけで。



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