【完】こちら王宮学園生徒会執行部
・15年越しの告白
◆
「……デジャヴですね」
ぽつり。
わたしのつぶやきを拾った彼は、小さく笑みをこぼす。それから「そうだな」とつぶやくその表情の裏には、おそらくわたしと同じ記憶が巡っているのだろう。
艶やかな装飾が綺麗な紺色の着物。
目の前に立つ料亭は、あの日と同じ。
そう、優美な日本庭園を望める料亭。
ルノが婚約者と顔合わせをしていた場所だ。
あの日わたしはこの着物で、彼の婚約者解消を申し出た。
……もうそんな権力、わたしにはないけれど。
「まさかまた来ることになるとは……」
またもやわたしのつぶやきに笑った彼が、迎えてくれた女将さんに名前を告げる。
そのまま案内されて向かったのは、離れのような場所。
「こちらのお部屋でございます」
どうにも、こういう隔離された場所には、気が乗らない。
人質だった分、裏の荒(すさ)んだ話には、何かと敏感だからだ。
それでも息を詰めて、背筋を伸ばす。
堅苦しくしなくていいと言われたけれど、いつみも今は黒のスーツだ。
「失礼します」
女将さんが、襖を開けてくれる。
あれ?こういう時って、いつみが先に入ったほうが良いの?それともわたし?
なんて、ぐるぐる考えてしまって。
「南々瀬」と苦笑しながらわたしを呼んだいつみが先に部屋に入って、手を引いてくれた。
そして、導かれるまま部屋に足を踏み入れれば。