【完】こちら王宮学園生徒会執行部



「あら、南々瀬ちゃん着物!かわいい!綺麗!」



「……なんでお前がここにいるんだ」



「え? だってわたしも家族でしょ」



「俺は姉を呼んだ覚えはない」



てっきりご両親だけだと思っていたのに、なぜか一緒に居るいくみさん。

美人で着物が似合う彼のお母様と、その隣には難しい顔をしているけれど優しそうなお父様。



そして、いつものパンツスーツ姿のいくみさん。

あと、部屋の隅に、お父様と同じくらいの年齢に見えるおじさまがひとり。



言い合いをはじめる姉弟に気を取られそうになったけれど、なんとか堪えて。

いつみの意識が逸れている間に、彼のご両親に頭を下げた。




「本日はお誘い頂きありがとうございます。

わたし、」



「あらあら南々瀬ちゃん、悪いことをしたわけでもないのに頭なんて下げないでちょうだい。

むしろ誘ったのはこっちなんだから、来てくれてありがとう」



すこし怖そう、というわたしの第一印象をよそに。

とてもやわらかい声でそう言ってくれるお母様と、「そうだぞ」と笑みを見せてくれるお父様。



「立ってなくて良いから、ほら、座って?

こら、あんたたち幼い子どもじゃないんだからいい加減に静かにしなさい」



鋭い声で言ったお母様に姉弟は言い合いを終わらせ、いつみに促されてお母様の目の前の席に座る。

それからちらりとわたしの視線に気づいたように、お父様が「彼はわたしの秘書だよ」と告げた。



部屋の隅に佇んでいる、素敵なおじさま。

お父様の、秘書、ということはつまり。



「夕帆の父親だぞ」



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