お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
毒舌ドクター
あっ!

…と思った瞬間は遅かった。

私の手からはケータイが吹っ飛び、膝は見事に伸びきって、体は前につんのめっていた。

アスファルトに打ち付けた膝に痺れるような激痛が走ったのと同時に、手から離れたケータイがガシャン!と音を立てて割れた。


街路樹の根っこに引っ掛かってすっ転んだ私を、自転車に乗った高校生男子が唖然と見てる。

呑気に見てないで起こせば!?と怒鳴りたくなるのを我慢して、あいたた…と言いながら平気そうに上半身を揺り起こした。


「いったー……」


半泣きで呟く私。
文具用品製造販売会社のOL、川島波南、二十六歳。
この頃、とてもツキのない女子と化してる。


ヨロリ…と立ち上がったものの、打ち付けた膝小僧からは出血し、三メートル先に吹っ飛んだケータイを拾い上げて見れば、その液晶画面は擦り傷多数と亀裂が一本入っていて……。


「こりゃダメだ。どう見ても死んでる」


ケータイがね。
私は何とか無事だけど。


「…ああ、それにしても痛い…」


さっきは恥ずかしさもあって咄嗟に動けた。
しかしながら、実際は歩くのも困難な程に足が痛む。


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