お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「はは。泣ける」


バカだなぁ…と呟いて涙を拭った。
昼間挟んだ指先が痛くて、ついでに胸も痛いから「いたぁ…」と言った。


早足だった足が止まり、その場に立ち尽くしてしまう。

潤んだ視界の中に見えてたのは、ドクターと初めて会った日に足を引っ掛けた街路樹の根っこだ。


いつの間にか来てたんだ。
用もないのに藤田外科病院へ。


(ホントにバカだな…)


クスッと小さく笑いを噛んで歩こうとした。

盛り上がったアスファルトの上を思いきり踏んづけてやろうと考え、足を大きく振り上げた。



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