お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「まあ今日のは治療って程でもないから別にいいけど」


貼り終えたドクターは立ち上がり、処置台の方に戻っていく。
私は白い湿布が貼られた右足を見つめ、この足で歩けるのかな…と考えた。


さっきまでのドキドキは痛みと共に飛んでった。
ドクターの舌が相変わらずだったから安心もして、緊張感が薄れたのだろうと思う。


「それじゃ」


「待てよ」


背中側からやって来たドクターが、自分の足元に跪いた。

診察台から降ろした足先に手を添えてテープを貼りだすもんだから慌てて。


「テープなんて貼らなくてもいいから!」


「貼らないと直ぐに剥げるぞ」


足を見たまま貼り続けるドクターには分かるまい。
やっと治ってたドキドキが蘇ってきて、さっきよりも更に増してってるというのが。

その上、ドクターの手には見慣れないものが握られてるから余計に緊張が増してしまい__。



「……先生…」


「何だ」


顔を上げる人と目が合い、胸の鳴る音はもっと大きくなった……。


「…あの、まさかとは思うけど、包帯を巻くつもり?」


その白い丸っこいの、どう見ても包帯ですよね。


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