お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「ああ、固定しないと歩けないだろ」


平然と言ってるし。


「巻けないんじゃ…」


確かそう言ったよね。


「巻けなくはないぞ。あんまり得意でもないが」


切ったり縫ったりは好きなんだけどなぁ…って、やっぱりサドだ!


「苦手ならしなくてもいいですよ」


「いや、やりたいからやらせろ」


やらせろなんて、この暗い室内で聞いたら卑猥だよ?


またしても首から上が熱く感じて押し黙った。

胸がキュンキュンしてきてしまい、包帯を巻き始めるドクターの指先の動きを見つめた。



「あんたさ…」


ぐるっと一周目を巻いた後、器用にも包帯を足の形に沿わせて動かす。

その手つきは見事なもので、流石は外科のドクターと言うか、苦手とかっていうのも嘘じゃんと思えてしまう程に上手い。


「いくら失恋したからってさ、ヤケ酒呷らなくても良かったんじゃね?」


急に喋りだしたことにキョトンとして眉根にシワを寄せた。


「女子ならさめざめと泣く程度にしとけよ。オッサンみたいにビール呷ってクダ巻くなんて止めとけ。
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