お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
あれじゃ大抵の男は見たら興醒めするぞ。自分でも女子だと言うなら、もっと女子らしくしてろよ」


「あの…」


「ん?」


包帯を巻き終わり、端を折り返した人が顔を上げた。

私の頬がピクピクと引き攣ってるのを知ってか知らずか、そのイケメンな顔を見て言い返した。


「何を勘違いしてるのか知りませんけど、私は失恋なんてしてません!」


あ…そうじゃないか、したんだ。
でも__


「あの時は、仕事のことで先輩に裏切られたのが悔しくて」


「はあ?先輩?」


「ずっと頑張ってきたから歯痒くて、やけっぱちで飲んでただけです!」


失恋ならさっきしたんだ。
それなのに、ドクターが変に優しくしたりするから切なくて。


「…なんだ。そうなのか」


「そうです。だから…」


「なんだ。そうなんだ…」


「はあ!?」


納得したように包帯の端をテープで留める。
話を聞く気がない彼は、立ち上がって手を伸ばしてきた。


「立ってみろ」


声と共に目の前に差し出される右手。
捕まれと言いたげな感じに胸が軋み、人の気持ちを弄んでばかりいるとムカついた。

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