お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
……それでも、彼を好きだと知った瞬間から全てのことがドラマの様に感じる。
指先を伸ばして触れたらドキッと胸が鳴り、ぎゅっと握り返されたらそれだけで嬉しくて__。
きゅん……と心臓の壁が狭まる様な気にさせられながら足に力を入れて立った。
包帯で固定された足首には痛みも感じず、むしろ胸の方が痛いくらいで。
「歩けるか?」
そんな優しい声で言わないでよ。
「歩けそうです」
痛くないから。
「歩いてみろ」
手を取ったまま先導してくれる。
仄暗い診療室も私の頭の中では舞踏会のような気分だ。
ゆっくりと前に進みながら玉砕覚悟でもいいからドクターに告ってしまいたいと思った。
どんなに毒を吐かれてもいいから言ってしまいたい。
一気に散ってしまってもいいから、この胸の内を伝えたい……。
ぎゅっと握る指先に力を入れる。
それを感じたのかドクターの視線が足元から上がり、私の視線とぶつかった。
「……先生」
好きです。
その一言で終わる__
息を吸って吐き出そうとした。
儚い恋だったな…と覚悟を決めた時だ。