お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
あんな人ばかり見てたら、フツウの女子は全員乳くさく見えてしまうんじゃないのか。

ハイスペックな彼に見合う女性は、その人自身も高性能でなければいけないんじゃないか。


私なんかが簡単に近寄れる人じゃないんだ。
精々ケンカ腰で話せて、言い合うくらいがお似合いなんだ。


まるで子供のように張り合って、過ごしてしまえるだけマシ。
病院でもバーでも、気づいて怒鳴られるだけいいのかも。


贅沢を言えばキリがない。
こうして苦手だと言ってた包帯を巻いて貰えるだけでも幸せ……。



(……だけど、せめて好きだって言いたかった……)


フラれてもいいから素直になってみたかった。
何言ってんだ?と笑い飛ばされてもいいから、気持ちを伝えてみたいと思った。


シンデレラみたいなストーリーを最初から期待もしてない。

最後にはオチのある喜劇のようになってもいいから、彼の目に一瞬だけ女子として止まりたかった。



(それだけで良かったのに……)


バスに揺られながら帰り道にあるコンビニへ寄ろうと決めた。

バーでは一杯だけだったビールをガンガン飲んで忘れようと思った。


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