お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
それからバタバタとパソコンの電源を落とし、お先に失礼します!と部署を出た。



なるべく急いで行こうと思うせいか、足首の痛みがあっても歩ける。

だけど、病院へ着いた私を待ってたのは藤田くんではなく、仏頂面をした彼のお兄さんだった___。




藤田外科病院の自動ドアをくぐり抜けた瞬間、目の前には仁王立ちしてるドクターがいて、いつも以上に不機嫌な表情をしてるもんだから、イケメンぶりが損なわれますよぉ〜と、冗談でも言おうものなら言い負かされそうな雰囲気を感じた。


あの…と小さく声を発したものの、無愛想な彼に「藤田くんは?」と聞けず、反対に彼の方から進言された。



「靖から話は聞いた」


えっ!藤田くん話したの!?


「足が痛むんだろ。さっさと上がれよ!」


いやー、そんな恐い顔されて勧められても、返って足が竦むんですが。


「だから、昨日無理するなと言ったのに」


でもぉ、私が気を利かせたから彼女と二人きりになれたでしょ?


頭の中でドクターにツッコミを返す。
勿論どれも口にできず、上目遣いで顔を見るだけに止まった。


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