お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「さっさと上がれ!足を診てやる!」


偉そうに言うと踵を返す。
診察室の方向に向かって歩きだした人にホッとして、スリッパの置いてある棚へ近付こうとした。


パンプスを脱ぐと朝よりも足が腫れてる。
浮腫んでるにしては足の甲に靴の跡が付いてて、何処かしら熱っぽさも感じる。



「…待て」


スリッパを手に取ろうとしたら止められ、振り返るとドクターがやって来た。
じっと足元を見下ろしてきて、目線を下げたまま言った。


「昨日よりも腫れてるじゃねーか、あんた昨夜何したんだ!?」


上がってきた目線が怒ってる。
ギクッとしたけど、ヤケ酒を呷りましたとは言えず。


「別に。何もしてませんけど」


缶ビールは五本飲んだけどね。


「しかもシップ貼り替えてもねえし。昨日のやつのまんまって、バカじゃねーのか!?」


頭ごなしに怒鳴るけど、こっちにも理由があって……。


「これは…」


包帯を解くのが勿体なくて……とは、流石に本人には言えない。


「これじゃあ貼ってる意味もない!全く!何処まで世話かけるんだ!」


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