お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「自分の部屋で飲んだのに誰にもクダ巻きませんよ」


そりゃ鏡を見ながら自分の顔をディスったけどね。


「一人で飲んだのか!?どれだけ酒が好きなんだ」


「別に…好きな訳じゃないですよぉ!」


言われ放題なのも頭にきて、つい言い返してしまった。
ドクターは湿布の上からテープを貼り付け、好きでもないのに飲むな!と怒鳴り返した。


「女子らしくしろって言っただろ!」


「女子はお酒飲んじゃダメなの!?」


昭和生まれか!?と思うようなセリフに反感を覚えて怒鳴り返すと、こっちを見直したドクターは呆れて___


「…飲んで捻挫を悪化させてるようじゃ女子じゃねーよ」


声色を変えて落ち着かせるように呟き、クルクルと包帯を巻き始める。
足の甲から巻く指先を見つめ、器用によく動く手だな…と思った。



(この人、この手でオペとかするのか…)


実際にしてるとこなんて見たことないけど見てみたい。
きっと今みたいに器用に動いて、楽しそうに切ったり縫ったりするんだろうな。


ぼんやりと顔を見てたら目が合った。
ドキン…と心臓が跳ね、彼の顔が近寄ってくるもんだから何?!と構えた。

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