お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
私は前向きな女子だから平気。
このくらいのツキの無さ、大したことないない。


「何だか知らないけどお急ぎのようだし、どうぞ気を付けて行って下さいね」


路肩から歩道に入ると手を振った。
ドクターは人差し指で鼻の頭を掻き、手を離すとキュッと唇を噛み締めた。



「…じゃあ、気を付けて帰れよ」


諦めが付いたのかギアを入れ直す。
ウインカーを灯してハンドルを切り、さっきの救急車と同じ方向へと走り抜けて行った。




「あ〜、幸せが遠ざかってくぅ〜」


そう見送りながら呟く。
だけど、今の自分の態度は満点んだったよね!?と自賛。



ショゲながらバス停まで歩いた。
程なくしてきた青いバスに乗り込み、座席に座ると大きな溜息を漏らす。



(あ〜あ、折角決意したのに…)


二度とないチャンスだと思ったのに残念。
これも全部ツイてないからか。



「私のツキの無さっていつまで続くの……」


一生…?と神様がいるなら訊いてみたい。
散々ツキの無い日々を送ったんだから、もうそろそろ戻ってきても良くない?
でないと人生呪っちゃうよ?


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