お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
車内の後部座席に座ってた高校生達が、道路に血が飛び散ってたね…と話し、怖がってるのを耳にして、ドクターはその事故にあった人を迎え入れるから処置を手伝って欲しい、と搬送先の病院から頼まれたんじゃかなと考えた。

……でも、よく考えてみれば搬送先の病院にもドクターはいる訳で、開業医をしてるドクターに処置協力の要請が出る筈もない。


そもそも電話の相手は「部長」って呼ばれていた。
彼がそう呼ぶ人は、多分以前働いてた市民病院の外科部長。

娘さんがとてもスタイルが良くて美人らしい、と同級生達がラインで喋ってた人の父親。

つまりは、あの時もう一人名前が呼ばれてた「エリナ」さんと親子の人。


ドクターはその部長先生と彼女と三人で会食でもしようと呼ばれたんじゃないのか。



「……うん、多分そうだよね…」


納得するように呟き、それであんな済まなさそうな顔をしたんだろうと納得がいった。


たかが捻挫とは言えど、怪我人を放っていくのが気が引けて、しかもそれが恋人とその親との私用が入ったからとは言い難かったから、私に「誠に言い難いんだが…」と前置きをしたんだろう。


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