お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「なんだ。どうした」


ドクターは彼女を迎えるようにソファから離れる。
こっちはその背中を見つめ、きゅっと胸が軋んだ。


「今日は何を頼まれても聞かないぞ」


二日も休診したんだからと話してる。
エリナと呼ばれた女性は知ってる…と言い、ちらっと彼の背後にいる私に目を向けた。


ドキン、と胸が弾んでしまう。
長身でストレートのセミロングヘアが似合う女性が、ニヤつくように唇の端を上げた。


「貴女、この間バーで会った人よね」


ソプラノトーンの声で言われ、直ぐにそうです…とも返せず。
黙ったままで呆然としてると、ドクターが視界を遮るように立ち位置を変えて彼女に言った。


「用事がないなら戻れよ」


「なんでよぉ。いいじゃない、別に」


子供っぽく拗ねる彼女に溜息を吐き出す。
これが私なら、さっさとどっか行け!で済まされてるところだ。


「お礼のメール来てたから教えに来たのよ。アッちゃんの体調、順調に回復してるって」


オペ協力有難うと入ってた…と言うと、ドクターも安心したように頷く。

どうやら部長と呼ばれてた人からの連絡を教えに来たみたいだ。

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