お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
ドクターは分かった…と返事して、ふぅ…と息を吐いた。


「……もう昨日みたいなのは後免だな」


午前からオペをしてたのにあの時間もだろ…と辟易する。彼の疲労が分かるのか、エリナさんも本当にね…と囁いた。


どうにも親密そうな二人だ。
彼女が弟の藤田くんのフィアンセだという噂は本当なのかな?


(どう見てもこの先生と親しげだよ?弟に略奪されたらこんな感じでは話せないでしょ?)


変だなぁ…と思いながら受付の方に向き直った。
何時だろうと思えば、いつの間にか九時を過ぎてる。


(マズい!仕事!)


ガタッと立ち上がり、受付に進んだ。


「すみません。さっきの件はお昼休みにまた来ます」


そう言って出ようとした。


「…あっ!川島さん!」


受付の女性が名前を呼ぶと、「川島?」とエリナさんが繰り返す。
それをハッキリ耳にしたけど、敢えて振り向こうとはせずにいた。



「……おいっ!」


ドクターの声がして、何故か後を付いて来る。
ドキンとして振り向くと、背後には彼女の不思議そうな表情が見えた。


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