お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「幼馴染。……みたいな関係の女。子供の頃は喘息持ちで、しょっちゅう発作を繰り返してたんだ」


今はピンピンしてるけどなと笑い、エンジンスイッチに手を伸ばそうとした。
話を中途半端な感じで止めようとする彼に、先生…と話しかけた。


「その人のことが好きだったんですか?」


あーもう、言わなくても分かることを聞いてしまう。


後悔してるとエンジンスイッチに手を伸ばしかけてた人の手が下りた。
私のことを振り返り、その唇が開かれた。


「…そうか」


(そうか?)


そうだの言い間違え?
どういう答え方だと顔を見てたら、ドクターがクク…と苦笑する。


「どうして笑うんですか?」


失礼だな。
そんなに変な質問してないのに。


「…いや、急に納得したもんだから」


そう言うと、うんうん…と頷く。
一人で勝手に納得してなよ、と冷めた目線を送りたくなった。



「……なあ、川島波南さん」


いきなりフルネームで呼ぶなんてアリ!?
ビクッと背中が伸びて、何事!?と焦った。


「な…何ですか?」


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