お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
目をパチパチとさせる。
泣きだしそうになってた気持ちもどっかに飛んでってしまった。


私を見つめながらドクターは鼻の頭を指で掻いた。
照れる様な仕草で、それならフルネームで呼ばなくてもいいんじゃないの!?とヒネくれた。


「……あんた、この前俺に『甘い言葉を言わせてみせる』と言ってたよな」


「え?…ええ、まあ」


言いそうもないからすっかり諦めてたけどね。


「それがどうかしましたか?」


最後に冗談で言ってくれるつもりなのかな。
それよりも私はさっき話題になった人への気持ちが知りたいのに。


「言ってやってもいいぞ。但し、一度しか言わねーからよく聞けよ」


「あーはいはい」


言うのはいいけど、どうせお菓子の名称でしょ?
ケーキ、チョコレート、キャンディだよね。


「適当な返事だな。言うの止めるぞ」


「そう言わないで。是非口にして下さい」


そっちが先に振ってきたんだから。


じっ…と目を向けるとドクターはフッ…と笑う。
私をきゅんとさせる微笑みを浮かべたまま、一度だけだぞ、と更に念を押した。


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