お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「波南も彼氏がいるんでしょ?柑奈に聞いたよ」


ニコニコと笑いかけてくる弘夏に、へへへ…と肩を竦める。


「その人もいつか紹介してよ。結婚が決まったら教えてね」


幸せな弘夏はそう言って部署を出て行く。
私と彼は、まだ一ヶ月くらいしか付き合ってないのに結婚か。



「羨ましいな、弘夏」


「うん……そうだね」


ぼんやりと出て行った先を見つめる。
柑奈は「あんたもよ!」と肘で突き、私はハハハ…と笑った。


確かにあのツキの無い日々は何だったの?と感じるくらいに、このところ毎日が楽しい。

ステキ過ぎる彼氏が出来て、その人はイケメンで、有能なドクターでお金持ちで……。


でも__




「グズグズすんなよ!」


言葉は相変わらず荒っぽいんだ。
外科を開業してると優しい物言いでは患者に付け入れられるから、と彼は言うけど。


「私はもう患者じゃないのにぃ…」


優しく言って~と願えば、優しくしてるだろうと肩を抱かれる。



「二人だけの夜に」


そう言うと髪に息を吹き掛けてくる。

彼とそういう関係になったのは、あの気持ちが重なった夜のことだ。


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