お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
脛を指先でなぞり、手の指も細くて綺麗だと褒められた。


「傷を残したくなくて丁寧に縫って良かった」


人差し指の根元にリップ音を立て、その後も全身を褒めながらキスを落とされていく___




「新さん…」


ほぼ無意識で名前を呼んだらしい。
その瞬間、彼が愛しそうに笑った。



(わぁ……)


病院で子供に見せた笑顔と同じだ。
目尻が下がって唇がきゅっと上を向いて。


きゅん…と胸が鳴って彼の首に手を回した。
その後は、甘い刺激に包まれていった____。





「波南っ!早く来いっ!」


映画館の通路で怒鳴るドクター。
二人きりの夜だけ優しくて甘い彼は、今日も毒舌を振りかざす。


「見遅れたら呪うぞ!」


いくらホラー映画だからって呪わないでよね。


「そんなに焦らなくても間に合うってば……あっ!」


絨毯に爪先が引っ掛かった。
危うくツキの無い日々が再来するかと思いきや__


「何やってんだ、バカ」


すんでのところで彼にキャッチされる。
私の代わりにポップコーンが少し散らばっただけで済んだ。



ホッ……良かった。


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