お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「ザラザラして安っぽい大量生産品だけじゃなく、長年使い続けたいと思う商品の開発をしましょう!」


私の考えに賛同してくれたのはチームリーダーの村田さん。
彼女はペンに拘る人で、特にボールペンのインクや出方に色々と懸念が深かった。


二人で文具の話をしだすと尽きなくて、よく一緒にお酒を飲みながら夜を明かした。
村田さんの話は自分の思う所と似ていて、本当に信頼できる人だと信じてたんだ。


だから、今度製造が決まった商品のプレゼンをしてくれると言った時も仕様がなく折れた。

膝を打ち付けて痛過ぎて、部長会議には出席できそうもなかったから。


だけど、この日出社した私を待ってたのは意外な事実だった。

自分が拘りに拘って作り上げた商品の発案者が、村田さんだと言われたんだ__。




「えっ…」


一瞬、何のことか分からずポカンとして部長の顔を窺った。
開発部の大杉部長はメガネの縁を持ち上げながら、だからね…ともう一度同じ言葉を言った。


「この間、村田さんが部長会議でプレゼントをしたメモ帳とノート、いい出来だと社長が褒めてたんだよ。


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