お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
思えば思う程悔しくなって、村田さんに何度か抗議の電話をしようかと思った。

だけど、顔を見て話が聞きたいと考え、じっとオフィスで帰ってくるのを待った。


退社時刻間際、ようやく外から戻ってきた彼女を捕まえ、お話があります!と声を上げた。


村田さんは私の表情が強張ってるのに気づき、少しだけ覚悟を決めたみたい。
ゆっくり話そうと言いだし、定時を少し回った時刻で二人揃って退社した。



「波南はお酒飲んでも平気?」


縫い傷もあるけど大丈夫?…と心配する。
でも、こんな冗談にもならない話、シラフではとても出来ない。


「大丈夫です」


そう返事をすると駅に近い立ち飲みバーで話そうということになった。
そこならカウンターに椅子もあるし食事もできると言うので。


昨日に引き続き、サンダル履きで店に向かう。
そこに着くまでは一切口も聞かず、黙ったままでお互いの間に流れる緊張を感じてた。



店に着くとまだ客さんは疎らだった。
私達はカウンターの端に席を取り、村田さんはワイン、私はビールの大ジョッキを注文した。


「大丈夫なの?大ジョッキなんて」


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