お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
そのまま逃げずに食べ終わるまで側に居て、私が食べ終えたのを確認してから立ち上がる。


「……あの、先生のお母様にお礼を…」


言わないと。散々迷惑を掛けたようだし。


「いい。礼なら代わりに言っといてやる。それよりもあんた仕事はいいのか?何時から始まるのか知らないが」


壁の時計を指差すと八時半過ぎ。
もの凄くノンビリと食ってたなぁ〜と呆れられ、しまった!と慌てた。


「やばっ!九時半からなのに!」


その前には着いておかないといけない。
私はあの部署ではまだ新人だから。


「間に合うのか?」


トレイを膝から取り上げたドクターは、ワゴンの上に乗せながら聞いてくる。


「ソッコーでタクシーを飛ばして着替えるくらいなら出来るかと」


ゴソゴソと動き出そうとしたら手で制止され、邪魔しないでよと顔を見上げた。


「慌てるな。この間みたいにすっ転んで怪我をされても困る」


「でも、急がないと!」


「俺が家まで送ってってやる。ついでに職場まで連れて行ってやるよ」


「ええっ!?」


いいんですか!?
その辺で放り出されるんじゃないでしょうね!?


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