お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
疑いの眼差しで見つめると、ほら…と声をかけられ、ペラっと布団を捲られた。


「ゆっくり降りろ。フラつくかもしれないから急に動くなよ」


なんか言い方が優しげだ。
あの男の子に話し掛けてた時と似てるみたい。


(……でも、顔つきは仏頂面に近いけど……)


やっぱり差があるなぁ〜と思いながらも足を下ろした。
立ち上がった瞬間はフラつきもしたけど、頭痛はさっきよりもずっと軽くて。



「歩けるか?」


ドクターの声に頷きを返す。
そうか、と囁く彼の顔がいつもの倍増しイケメンに見えた。


カッコいい…と思った瞬間、きゅん…とした。

胸の奥が熱くなって、ぎゅっと掴まれたような感覚を覚えた。


(だけど……)


直ぐに自分が落ち込んでるせいだと首を振る。
信頼してた村田さんに仕事の美味しいところを持って行かれて気持ちが弱ってるせいだ。

だから……


(ダメダメ!こんな人にキュンとしたら)


いいのは顔だけで口も性格も悪いんだから。


気を引き締め直して病室を出る。

きゅんとしたらダメなのに彼の車に乗ってる間中、ずっと胸が鳴って苦しかった……。



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