黒猫
私のクラスから校長室までは近くもなく遠くもなくな距離。


外で走っているクラスの子達を見ながら足を進めていると、ふと一人の男子生徒が目に付いた。


真っ黒の髪。別にそんなのは珍しくはないのだけれど、その髪から覗いた横顔が、なんだか目を引いた。


「ん?てかあんなやつクラスにいたっけ……?」


私は基本的にクラスメイトの顔を覚えてはいない。
いないけど、なんとなく、ぼんやりとは覚えてる。すごくぼんやりとだけど。だけどあんな顔のやつは多分いなかったと思うんだけどなあ・・・。


「単に忘れてるだけか。」


そう結論付けて、私は窓から顔をそらした






そんな私の横顔を、彼が見ていることに気がつかないまま。








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