気付けば、君の腕の中。
その言葉に驚きが隠せなかった。
…何で、あたしを選ぶの?
そこは彼女である桃を選ぶはずなのに…。
「じゃあ絢華は坂木くんと乗ったらいいんじゃないかな?」
「え、で、でも…」
いつの間にか五十嵐くんがいない。
トイレにでも行ったのかな……。
「ね、絢華。私は大丈夫だから」
「……桃、でもあたしよりもっ…」
桃が乗ったほうが…、と言いかけて言葉を呑みこんだ。
「いいから…ね? 坂木くんが待ってるよ」
今にも泣き出しそうな桃の表情を見て、あたしは傷つけてしまったと理解した。