気付けば、君の腕の中。
あたしはへらりと笑って「大丈夫だから」と二人の背中を押した。
…大丈夫って何がなんだろう。
何度も振り返る二人は、ゆっくりと出口を目指して歩き出す。
しっかりと凜くんの手は桃の右手を掴んでいるから、二人がはぐれる心配はないだろう。
これでよかったはずなのに、喉に小骨が引っかかったかのように、口が開いては閉じる。
…最初から凜くんに教えたらよかったのだ。
ようやく恋人らしい雰囲気を見せた二人を見送ると、あたしは近くのベンチに腰を下ろした。
「…五十嵐くん、やっぱりまだ帰ってなかったんだね」
段々と寒さが身に染みてきたときに、夜空を見上げると、五十嵐くんは凜くんたちとは反対方面から歩いてきた。
「……お前、襲われてーから残ってんの?」