気付けば、君の腕の中。
驚いて目を見開かせるあたしに、五十嵐くんは「お前とアイツが付き合ってんのかって疑ってた」と呟いた。
「え、ええ…なんで…」
「何でって、誰がどう見ても付き合ってるように見えたわ。正直、あの女よりお前のほうがぴったりだと思うけど、どーでもいい」
ぐっと顔を近寄せられて、反射的に後ろへ仰け反ると五十嵐くんはくつりと笑った。
「精々、フラれてバカみてーに泣いとけば。それがアイツに惚れた女の行く末だから」
「…は」
「それと、二度とおれをこんな茶番に付き合わせるなってアイツに言っとけ」
至近距離で見た五十嵐くんは、冷たい瞳であたしを見下ろしていた。
そのまま去っていく背中を見つめると、一人残されたあたしは何とも言えない気持ちに胸を痛めた。