気付けば、君の腕の中。


テーブルを挟んだ先に座る桃は、ケーキを食べるのを止めた。


何だか桃の視線に居た堪れなくなって、ケーキの入っていた箱へ視線を移す。

有名なロゴが入ったケーキは高かったはずなのに、こんな気まずい空気の中で食べるなんて。


…これを買ってくれた桃のお母さん、そしてケーキにも申し訳ない。



「で、でも…絢華は坂木くんのこと、好きなんでしょう?」

「ううん、“友達”としてなら好きだよ」



そうだ。

何度も言い聞かせたのだから、その通りなんだ。



「だから桃が凜くんを幸せにしてあげて?」


…「好き」と認めてはいけないことがこんなにも辛いなんて。

思いもしなかったよ…、本当に。


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