気付けば、君の腕の中。
ガタッと立ち上がった桃は、フォークを置いてあたしの両手を握り締めた。
「う、嘘なんでしょっ…? 坂木くんのこと、好きならはっきり言ってよ!
絢華だって辛いし、私だって何も気づかないままなんて…嫌だよ…っ!」
幼稚園から仲がよかった親友は、ぼろぼろと涙を零して、それでも視線を逸らさなかった。
「私、一番絢華に幸せになって欲しいの!」
その言葉にあたしまで泣きそうになった。
…でも、ごめんね、桃。
「…桃、凜くんと“付き合ってる”なんて誤解させるような行動しちゃって、ごめんね」
あたしは凜くんの望む“友達”にならなきゃいけないんだ。
「本当に凜くんのことは、恋愛として好きじゃないから」
だから、あたしなんて気にしないで、幸せになってよ。