気付けば、君の腕の中。
呆然と立ち尽くす桃と、彼女の手を振り払ったときにお皿を落としてしまい、無残な姿になったケーキへ視線を向けた。
「……ごめん、でもいいんだ。桃が凜くんを幸せにしてあげて」
ぐちゃぐちゃになったケーキから視線を逸らすと、鞄を掴んで桃の家から逃げ出した。
…何で、一生隠すつもりだった感情を、凜くんの恋人である桃にぶつけてしまったの?
もし、桃と凜くんが別れてしまったら。
全部全部、あたしのせいだ。
……ごめんなさい、桃。
あたしはやっぱり大人になんかなれなくて、中途半端な人間なのだ。