気付けば、君の腕の中。
壊れ物を扱うように、あたしの頭を撫でたお母さんは、どこかへ出かけてしまった。
ぼたり、ぼたりと床に涙が零れ落ちる。
どんどん広がるシミは、一生癒えないあたしの心の傷と同じように広がっていった。
「っふ…あたし、が、もっと…早くっ…」
胸が苦しくて、これ以上は無理だと言うほど泣き叫んでいる。
耐え切れなくなって、その場に崩れ落ちると軽快な着信音が鳴り響いた。
驚いたあたしは、握っていた携帯を落としてしまった。
その衝撃で通話ボタンが押されたらしく、画面に名前が表示される。
『あ、もしもし? 絢華、今時間あるかな』