気付けば、君の腕の中。



三つ隣の家に住む男の子が転校してきて、早一週間。

あれから駅のホームで会うこともなければ、学校内ですれ違うこともない。




もしかしたらあの日、男の子と会ったのは夢だったのではと思うほど、記憶は日々薄れていった。



今日は朝早くから挨拶委員会の仕事があるため、1本早めの電車に乗り込む。


いつもは混んでいるはずの電車内は空いていた。



何となく立ちたい気分だったため、扉近くの手すりに掴まった。


「坂木くん。どこ見てるの~?」


不意に聞こえた声にびくりと震え上がった。


< 13 / 445 >

この作品をシェア

pagetop