気付けば、君の腕の中。
自分を落ち着かせるために、ジャージに着替えると、携帯をズボンのポケットに押し込んで、家から飛び出していた。
外の冷たい風が、俺の頬に触れては通り過ぎていく。
頭の中で今まで付き合った彼女が浮かび上がった。
『ご、ごめん…。そんなに重い過去を背負われてると…、その、こっちも辛いっていうか…』
『あー、うちそういうの苦手だから。相談とかのれないし、自分で解決してほしいんだよね』
『坂木くんは他に好きな子…、いるよね?』
最後に聞こえた声に、ぴたりと足が止まってしまった。
はあ、はあ、と何度も息を吐き出すと、心臓を抑えるように、ジャージを握り締めた。